世界的な問題となっている肥満を解決するため、ニュージーランドとイギリスの研究チームが「磁石で強制的に口を開かなくさせる肥満対策器具」を開発しました。

ところが、口を閉じさせて流動食のみの生活を送らせるこの器具については、非人道的だと批判する声も挙がっています。

ニュージーランド・オタゴ大学の研究者らがイギリスの研究者と協力して作った肥満対策器具「DentalSlim Diet Control(デンタルスリム・ダイエット・コントロール)」の写真が以下。

独自に製造した締め付けボルトで奥歯の上下に取りつける口腔(こうこう)内器具であり、磁石の力によって強制的に口を閉じさせるため、装着中はわずか2mmしか口を開くことができないとのこと。

デンタルスリム・ダイエット・コントロールを装着しても呼吸や発話が妨げられることはありませんが、口が開かないので固形の食べ物を口に入れることができなくなります。

そのため、食事を流動食のみに制限することができ、肥満に苦しむ人の減量を助けられると研究チームは主張しています。

研究チームは、実際に7人の肥満の被験者を集め、デンタルスリム・ダイエット・コントロールを装着して2週間生活してもらう実験も行いました。

被験者は2週間にわたり市販の流動食を飲んで生活し、装着から1日後、7日後、14日後、そして器具を外してから2週間後のタイミングで面談を行い、生活の質や器具の快適さに関して回答しました。

被験者は全員が女性であり、平均年齢は36.71歳、平均体重は107.98kgでした。

また、被験者のうち1人が研究とは関係ない理由で装着から8日後に器具を外し、1人が器具を外してから14日後の面談に出席できなかったとのこと。

実験の結果、被験者は平均して6.36kgの減量に成功したことが判明しました。

また、面談では味覚の変化や何かを飲み込む際の不快感などはほとんど報告されませんでしたが、いくつかの言葉を発するのが困難だったり、たまに不快感や生活の質の低下を実感したりするとの報告もあったそうです。

しかし、被験者は今回の結果に満足しており、今後の実験にも参加する意欲を見せたと研究チームは述べています。

論文の筆頭著者であり、オタゴ大学の健康科学部で副学長代理を務めるポール・ブラントン教授は、デンタルスリム・ダイエット・コントロールは肥満と闘う人々にとって効果的かつ安全で、手頃な価格で入手可能なツールになるだろうと主張。

「減量の成功における主要な障壁はコンプライアンスです。この器具は人々が新たな習慣を確立するのを助け、低カロリーの食事を一定期間順守できるようにします」と述べています。

また、1980年代には人々の顎を外科的にワイヤーで固定する減量手法も存在しましたが、これは嘔吐(おうと)や窒息のリスクを伴ったほか、歯周病や精神面の問題も生じるものだったとのこと。

一方、デンタルスリム・ダイエット・コントロールは非侵襲的であり、緊急時には取り外したり再び装着したりすることも可能です。

ブラントン氏は、「この器具の美点は、患者が装着してから2~3週間で磁石を外すことができる点です。その後、食事制限がない期間を過ごしてから、再び治療に戻ることができます」「これにより、栄養士のアドバイスに基づいた段階的な減量アプローチが可能になり、長期的な減量目標を実現できるようになります」と述べました。

研究チームはデンタルスリム・ダイエット・コントロールの有用性をアピールしていますが、研究結果を発表して以降、ソーシャルメディア上でさまざまな批判を浴びています。

かつて親から自分の意思に反してワイヤーで顎を固定する減量手術を受けさせられたというJacqui Cheng氏は、「これは恐ろしいものです。間違いなく、子どもを支配する虐待的な親によって使われるでしょう」とコメント。

こうした状況を受けてオタゴ大学は、デンタルスリム・ダイエット・コントロールが迅速または長期的な体重減少ツールとして開発されたものではなく、減量手術を受ける必要があるものの、手術を受けられない人向けの器具だと補足のツイートを行っています。

また、2~3週間で器具を外し、食事制限がない期間を過ごしてから治療に戻れることも説明しました。