新型コロナウイルスのワクチン接種を加速してきた政府が一転してブレーキを踏み始めた。

米モデルナ製を使った職場・大学接種の申請停止に続き、河野太郎行政改革担当相は29日、米ファイザー製を使った自治体での接種のスピードダウンに言及。

接種の能力を高めようとしてきた自治体や企業は方針転換を迫られる。

背景にあるのは、ワクチンの需要と供給のバランスに関する政府の見通しの甘さだ。

(井上峻輔) ◆自治体への配送、7月当初は6割に  ファイザー製のワクチンの供給は、本格化した4~6月が約1億回分だったのに対し、7~9月は約7000万回分に減る。

自治体への2週間ごとの配送量も現在の1872万回分から、7月当初は1287万回分と約6割になる。

 全国知事会は25日、配分の急減を前に、政府に「必要なワクチンを現場のスケジュールに合わせて適時適切に供給できるよう万全を尽くしてほしい」と要請。

これに対し、河野氏は29日の記者会見で「どこかの段階でペースを供給と合わせて考えていただく必要がある」と表明。

政府のワクチン在庫量を含む供給能力が自治体から分かりにくいことも影響し、認識の差があらわになった。

◆政府、全国の在庫把握できず  実情を把握しきれていないのは政府側も同じで、田村憲久厚生労働相が22日の記者会見で「各自治体間、医療機関の中に在庫がたまっている可能性がある」と指摘。

今後は調整のため、調査を進める考えを示した。

 これまで政府は自治体をせかし続けてきた。

菅義偉首相は4月の記者会見で7月末までの高齢者接種完了を表明。

間に合わない自治体には、前倒しを強く求めた。

ワクチン供給が急減すれば、自治体は急速に膨らんだ接種態勢の縮小を迫られる。

実際、岐阜県各務原市は8月から、首相要請を受けて2カ所から8カ所に増やした集団接種会場を全て閉じると決めた。

◆加速の反動でブレーキ 職域接種と重なる構図  アクセルを強く踏み、反動でブレーキを踏む構図は職場接種の申請の一時停止と重なる。

 企業・大学から「予想をはるかに超える申し込み」(首相)があっただけでなく、企業側の従業員数を超える過大な申請や、政府側の審査の甘さなどの要因が重なり、自治体の大規模接種会場と合わせて供給可能な上限を超えた。

 既に申請済みの企業については、政府は申請の中身を精査して全体量を減らした上、配送時期をずらすため希望より延期を求めることも検討する。

既に1回目を打った企業は「そのまま動いていく」(河野氏)と2回目も確実に配送する方針を示している。

東京新聞c2021年06月30日 06時00分