太陽光と微生物の力を使えば食料を「10倍の効率」で生み出すことが可能との研究結果 Gigazine 2021年06月22日 21時00分00秒 食卓に並ぶごはんやパン、野菜が植物由来なのはもちろん、食肉を作る牛や豚も飼料作物を食べて育っているため、現代人の口に入る食べ物の大半は植物が生み出したものだと言えます。

ドイツのマックス・プランク研究所の研究者らが新しく発表した論文により、植物ではなく微生物を太陽光のエネルギーで培養することで、大豆などの作物の10倍以上の効率で食料を合成できることが分かりました。

Photovoltaic-driven microbial protein production can use land and sunlight more efficiently than conventional crops | PNAS Microbes and solar power ‘could produce 10 times more food than plants’ | Food | The Guardian 人口の増加や食生活の変化により、食糧問題はますます深刻になってきています。

特に、地球上の陸地面積の26%、農地の83%が家畜を飼育する放牧地や飼料作物の栽培に 使われているため、肉を食べる食文化の普及は農業による環境破壊を著しく増大させていると指摘されています。

地球温暖化を止めるには私たちが「肉や乳製品を食べなくなる」ことが不可欠 – GIGAZINE 食糧問題と環境問題に取り組んでいるマックス・プランク分子植物生理学研究所のドリアン・レガー氏らの研究チームは、微生物が生み出す「 微生物タンパク質(SCP)」に注目し、太陽光発電などの再生可能エネルギーで微生物タンパク質を生産した場合と、大豆などの作物でタンパク質を生み出した場合におけるエネルギー効率を算出して比較する研究を行いました。

研究チームが提唱する、SCPによる食料生産の概略図が以下。

太陽光発電で得られた電気エネルギーは、大気中から二酸化炭素を取り出す装置に送られ、その二酸化炭素から酸素が作られます。

この酸素や太陽光発電のエネルギーでバイオリアクターを稼働させて微生物を培養し、その微生物が産みだしたSCPを原料にして食品や動物用の飼料が作られるというのが、SCPによる食料生産の仕組みです。

太陽光発電とSCPを組み合わせた食料生産方法でどれだけの食料が作れるか試算したところ、1ヘクタールでタンパク質が年間15トン生産可能だということが判明。

実に520人の人々が1年間必要な分のタンパク質がまかなえるとの結果が得られました。

一方、最も効率的にタンパク質が生産できる大豆の場合、生み出せるタンパク質は年間1.1トン、人数にして40人分と、上記の生産方法の10分の1以下という結果になりました。

研究チームによると、この論文では「大豆とタンパク質」に焦点を当てたものの、「 パーム油と微生物による食用油の生産」など、さまざまな分野の食品と微生物を比較しても同様の結果になるとのこと。

レガー氏は「微生物は非常に応用が利くので、最終的には多種多様な食料や製品を生み出すことができるでしょう」と話しています。

また、この仕組みは土地・水・肥料の効率もいいため、日照量が多く肥沃(ひよく)な土壌を持つ土地以外でも食料を生産することが可能です。

一方、費用は食肉の数倍以上かかってしまいますが、技術の発展や普及によりコストは下がると見込まれています。

レガー氏はこの研究結果について、「『微生物食品』は非常に有望なので、食糧危機の解決に大きく貢献するものの1つだと私は考えています」と話しました。

なお、微生物が生み出すタンパク質を食品にする試みとして、イギリスの食品メーカー・Quornが開発した「 マイコプロテイン」がすでに登場しており、どんな味なのか実食した結果は以下から読むことができます。

肉の代わりに食べられる菌類「マイコプロテイン」試食レビュー、一体どんな味なのか? – GIGAZINE