米国のワクチン接種ペースが低下し、その他の国々がワクチン確保に苦心する中、 3月にインドで初めて確認された新型コロナウイルスのデルタ株が、 死者数を劇的に増やすのではないかと公衆衛生の専門家らが警戒を強めている。

デルタ株は現在、世界70カ国に広がり、インド、英国、シンガポールにおいては最も優勢な株となっている。

先週、英国での新たな感染例の90%以上がデルタ株となり、5月1日以降、新規感染者が急増した。

デルタ株は英国で最初に発見されたアルファ株(従来株より約50%伝播しやすい)と比べて、さらに60%広まりやすいとされている。

「これはスーパースプレッダー変異株であり、そこが厄介なのです」と語るのは、米スクリプス・トランスレーショナル研究所の創設者で所長のエリック・トポル氏だ。

トポル氏によると、デルタ株は免疫系から逃れられる特徴を有しており、南アフリカで最初に報告された、 これまで最悪の回避能力をもつと言われていたベータ株(B.1.351)を上回ると考えられるという。

「そのうえ、これまでに確認されたものの中で最も伝播しやすいのです。これは非常に良くない組み合わせです」 インドと英国で、4~6週間のうちにデルタ株が優勢になったことから、デルタ株の伝播のしやすさと感染しやすさが従来の変異株よりも高いことがわかる。

また、デルタ株はより重い症状を引き起こす可能性がある証拠も見つかりつつある。

例えば6月14日付けで医学誌「The Lancet」に発表された論文では、スコットランドにおいて、デルタ株による入院のリスクは、 すでに重症化しやすかったアルファ株の約2倍であると報告された。

「より伝播しやすく、重症化もしやすくて、ワクチンを逃れるという3つの要素が組み合わさったデルタ株は非常に危険です」 と英ロンドン大学クイーンメアリー校の臨床疫学者ディープティ・グルダサーニ氏は語った。

いったん国内・域内に侵入してしまえば、デルタ株は急速に広がる。

「封じ込めるのは非常に難しく、数週間のうちに支配的な変異株になる可能性が高いでしょう。 デルタ株によってパンデミック(世界的大流行)の流れが変わることもあり得ます」と、警鐘を鳴らす。

イングランド公衆衛生局(PHE)が6月11日付けで発表した報告によると、 英国においては、緊急治療を必要とし、デルタ株と確認された全患者の31%が、一度新型コロナに感染したことがあるか、少なくとも1回のワクチン接種を受けていた。

5月24日付けで「bioRxiv」に発表された現在査読中の別に研究では、ファイザー社のワクチンは2回接種後、 発症予防効果についてアルファ株では93%の有効率を示したが、デルタ株の場合は88%だった。

アストラゼネカ社のワクチンは、2回の接種でアルファ株に対して66%の有効率があったのに対し、デルタ株では60%だった。

しかし、どちらのワクチンにおいても接種が1回だった場合には、その有効率はアルファ株に対しては51%、デルタ株に対しては33%にとどまった。

この数値は、米食品医薬品局(FDA)が安全なコロナワクチンに求めた基準である50%を下回る。