ねとらぼ2021年06月22日 18時30分 映画の内容を10分ほどに編集し、権利者に無断でYouTubeに投稿する「ファスト映画」について、業界団体が法的措置に乗り出したことが分かりました。

コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の試算では、これまでの累計被害額は950億円超にのぼるとされ、警察とも協力し、発信者情報開示請求や刑事摘発などに向けて動いているといいます。

この1年で急激に増加した「ファスト映画」  こうした動画は「ファストシネマ」「あらすじ動画」などとも呼ばれ、短い時間で映画の内容や結末をほぼ網羅できるのが特徴。

多くは映画本編の映像や音声を無断で切り貼りして作られており、映画全編をアップロードしているわけではないものの「引用の範囲を超える、明らかな著作権侵害であり重大な犯罪」とCODA側は指摘します。

また、結末まで含めた映画の内容を全て紹介してしまうことで、映画本編を見ないことにつながる懸念もあります。

 CODA代表理事の後藤健郎氏によると、こうした「ファスト映画」を専門的に扱うチャンネルが増えはじめたのはここ1年ほど。

1年前には約10チャンネルほどだった専門チャンネルは、現在確認できているだけで55チャンネルに増加。

中には合計8000万回以上再生されているチャンネルもあり、多額の広告利益を得ているとみられています。

 現在確認されている55チャンネルだけでも、累計再生回数は4億7700万回超(CODA調べ)。

後藤氏はこうした「ファスト映画」について「映画業界にとって大きな打撃」だと問題視します。

「2時間の映画というのは、製作者や演者が熱心に考えて表現しているもの。それを営利目的で勝手に切り取って投稿するというのは到底許しがたい行為です。ましてコロナ禍で映画館が苦境にさらされているなかで、減収につながるような行為は団体として見過ごすことはできません」(CODA 後藤代表理事) 法的問題は? 弁護士に聞いた  これらの動画について、具体的にはどのような法的問題があるのか。

CODAとともに取り締まりを行っている、弁護士法人東京フレックス法律事務所の中島博之弁護士に聞きました。

「まず、映画の映像をそのまま使っている点、また著作物を違法にアップロードしている点について、これは複製権と公衆送信権を侵害しているといえます。さらに、2時間程度の映画を無断で10分程度に編集している行為についても、翻案権侵害や同一性保持権侵害にあたるといえるでしょう。また、映画の大半の内容を詳細に文字として抜き出してナレーション・字幕にしている動画もありましたが,これについても翻案権侵害が疑われます。例えば『スター・ウォーズ』の映像は使っていなくとも、劇中のセリフや描写を事細かに最初から最後まで文字で抜き出し、その映画の小説を作るような行為が許されないことを想像いただければ分かりやすいかと思います。これについては文化庁の『著作権Q&A』も参考になると思います」(中島弁護士)  また中島弁護士によると、明らかな著作権侵害であるにもかかわらず、多くの動画が削除されず収益化申請も通ってしまっている背景には、「日本語の動画だと海外の権利者には見つかりにくい」「タイトルや説明欄に映画のタイトルを記載しないなど、投稿者側も見つからないよう工夫している」「静止画を多く取り入れることで、コンテンツIDによる検知をすり抜けようとしている」といった実情があるようです。

 他にも、「日本未公開の映画のDVDを、先行して公開されているアメリカから取り寄せ、日本での劇場公開に合わせて動画を投稿する」といった行為も確認されており、「映画会社の宣伝行為にフリーライドする行為」「明らかに営利目的の著作権侵害行為であり、悪質さで言えば『漫画村』と変わらない」と中島弁護士。

また投稿者について調査したところ、都内の法人が運営していたチャンネルもあったといいます。

削除済みのチャンネルにも厳しく対応  こうした業界の動きについては6月20日にNHKでも報じられ、現在は多くのチャンネルが動画を削除するなど撤退の動きを見せています。

しかし、CODA側では既に具体的な侵害の証拠などは押さえてあり、削除済みのチャンネルに対しても今後、法的措置を含めて厳しく対応していくとしています。

「CODAは、著作権を侵害する悪質な『ファスト映画』に対して、その視聴環境を提供する米国のYouTubeに発信者情報開示請求を行います。これにより運営者を特定し、その確たる証拠に基づき、日本警察へ相談し刑事摘発につなげるなど、この状況を一掃していきたいと思います」(CODA 後藤代表理事) (以下リンク先で)