「社員が殺されても知らないぞ」匿名メールの情報開示認めず…最高裁が1・2審判断覆す 2021/06/05 15:16  企業に届いた匿名の脅迫メールを巡り、最高裁が地裁や高裁の判断を覆し、送信者情報の開示を認めない決定を出していたことがわかった。

決定の背景には、メールがインターネット掲示板やSNSへの投稿と異なり、プロバイダー責任制限法で情報開示の対象になっていないことがある。

同じネット上の行為でありながら、片方は「野放し」になりかねず、専門家からは法整備を求める声が上がる。

(駒崎雄大) 〈放火されて社員が殺されても知らないぞ〉  2019年夏。

東京都内の映像会社にこんな内容の匿名メールが繰り返し送りつけられた。

36人が犠牲になった「京都アニメーション放火殺人事件」の直後だったこともあり、映像会社は責任を追及するため、送信者を特定することにした。

 ただ、同法が情報開示の対象とするのは、「不特定多数」が利用するネット掲示板やSNSなどへの投稿に限られる。

送り手と受け手が「1対1」でやり取りするメールは含まれていない。

 このため同社は、民事訴訟法の規定に着目。

証拠の散逸などを防ぐために設けられた「証拠保全手続き」や、その証拠を提示させる規定を使い、ネット接続業者(プロバイダー)のNTTドコモを相手取り、送信者の氏名や住所などの開示を求める裁判を起こした。

 ドコモ側は「送信者の情報は憲法などが保障する『通信の秘密』にあたり、プロバイダーには守秘義務がある」と主張。

「メールはプロバイダー責任制限法の開示対象ではなく、送信者の情報を開示できない」と反論したが、1審・東京地裁と2審・東京高裁は、メールが脅迫的な内容で、責任追及には情報開示が不可欠であることを重視し、「送信者の情報は保護に値する秘密とはいえない」として開示を命じた。

 ところが、最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)は今年3月18日付の決定で1、2審を破棄。

映像会社の申し立てを却下した。

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