「リンゴは甘くて収穫量が多いのが望ましい」。

こんな世界の常識が変わりつつある。

虫や病気を寄せ付けず輸送中にも傷が付かない堅い果実や、40度の熱波にも耐える品種などが各地で生まれている。

消費者にとっておいしいのは当たり前。

その上で地球環境問題に対応するのが特徴だ。

(特別編集委員・山田優)  「私たちの計測では普通のリンゴ品種の平均的な硬度を6、7キロとすると、『ギガ』の場合は9、10キロになる。身が締まっていて、比重も大きくカリッとした食感になる。もちろん、甘くて香りが良いのも特徴だよ」  ベルギーの育種会社ベター3フルーツ社のニコラス・スティーブン部長は、電話口でうれしそうに説明する。

同社が開発したブランド名「ギガ」と呼ばれるリンゴは、専門業者を通じて世界各地にライセンスが与えられ、今年から果実が出回る。

 果実が堅いため、害虫や病気に強い。

傷が付きにくく長距離輸送にも耐え、フードチェーンの全ての段階で廃棄が減るのが利点だ。

「農薬を使わない有機農業にも適している」と同部長  完熟して本来の味が出るまで数カ月の貯蔵が必要で出荷は年明けからになるという晩生だが、その分、遅くまで味が低下しない。

家庭で保管する際にも品質低下しにくいのが特徴だ。

 「ギガ」は欧州有数のリンゴ大産地であるイタリアの南チロル地方で、今シーズンから一足早く出荷が始まる見通しだ。

同地方の生産者団体は今年、「ギガ」以外にも2種類のリンゴをデビューさせる。

その中の「レッドポップ」も果実の堅さが売り物で、有機農業や減農薬栽培に適しているという。

 欧州連合は有機農業の割合を2030年までに25%に引き上げる計画。

リンゴも味の良さだけではなく、農薬に依存しない品種の普及が求められていた。

日本で栽培「計画なし」  ニュージーランドに本社を置く育種会社T&Gグローバルは昨年「気候変動に対応した最初の商業品種を開発した」と発表した。

育種責任者のピーター・ランドン・レーン氏は21日、日本農業新聞の質問に「HOT84A1」と呼ばれる品種が、スペインで今年から商業栽培が始まると回答した。

40度を超えるような酷暑の中でも着色し、ぼけにくいという特徴があるという。

 「欧州の他、南米やオセアニアなどでも同品種の試験栽培が始まっている。現時点では、日本での計画はない」(レーン氏)。

世界中の既存産地は温暖化の影響を毎年受けるようになっており、高温耐性がリンゴに求められることになりそうだ。