英製薬大手アストラゼネカが開発した新型コロナウイルス感染症のワクチンを巡り、調達契約を結んだ一部について、途上国などに提供する国際枠組み「COVAX」(コバックス)を通じて他国に提供する案が政府内で浮上している。

同社を含む米英3社との契約で国内での必要量を超えるワクチンを確保したが、うちアストラゼネカ社製の活用策が定まっていないことが背景にある。

提供は国際貢献になる一方、健康被害が生じた時の責任の所在など課題もある。

【3度の緊急事態、どこが違う?】  厚生労働省は21日、アストラゼネカ社製と米モデルナ社製のワクチンを薬事承認。

米ファイザー社製と合わせて国内では3種類が承認されたが、アストラゼネカ社製は欧州でごくまれな副反応として血栓症が報告されたことから、当面は使用せず、対象年齢や使い方を引き続き議論する。

 国内では既に、米企業2社のワクチンの使用を前提に接種体制を構築。

2社分で9月末までに接種対象となる国民に行き渡る必要量は確保できた、とする。

 アストラゼネカ社製は、冷凍管理が必要な米2社のワクチンとは異なり、冷蔵保管ができ、小分け配送も可能なため、政府は地域の診療所などでの使用を想定する。

ただ、希望する自治体がどこまであるかは見通せないのが現状だ。

 アストラゼネカ社から調達するのは1億2000万回分。

うち3000万回分は原液を輸入するが、9000万回分は国内企業に委託して原液から国内生産する。

既に原液を専用容器に充塡(じゅうてん)する「製剤化」も一部始まっている。

保存できる期間は6カ月で、この間に使い切らなければ破棄せざるを得ない可能性がある。

欧州では接種対象を高齢者に限定する国もあり、国内でも年齢制限を設けた場合、必要量は限られる。

供給先の確保は喫緊の課題だ。

 一方、感染拡大にあえぐ中低所得国ではワクチン不足が深刻だ。

世界保健機関(WHO)などは各国から資金を集めてワクチンを調達し途上国などに分配するCOVAXを構築。

アストラゼネカ社製を含め複数種類のワクチンを途上国に供給している。

 先進国と途上国の「ワクチン格差」が広がる中、米国は米企業3社製とアストラゼネカ社製をCOVAXなどと連携して他国に提供すると表明。

国産ワクチンの開発が遅れる日本は国際貢献にも苦心しており、COVAXの活用案が浮上した。

 しかし、課題もある。

関係者によると、アストラゼネカ社との調達契約には、接種後に健康被害が起きた場合の賠償は、企業側でなく日本政府が肩代わりする内容が含まれるという。

現状では、提供先の国で健康被害が生じた場合は日本政府が責任を持つことになるが、政府関係者は「提供先の政府が賠償を肩代わりすることがルール化できれば提供は可能になる」として調整を急ぐ構えだ。

 血栓症の発症は100万人に数例とごくまれなことから、WHOは接種の利点がリスクを上回るとして接種を引き続き推奨している。

ただ、国内で未使用のまま海外への提供を進めることには「懸念があるから外に出している、と批判されかねない」(別の政府関係者)との声もあり、国内での活用の道も引き続き探る方向だ。

5/22(土) 16:58 毎日新聞