略)札幌地裁は3月の判決で、同性婚を認めていない現行の法制度を違憲と断じた。

 24条の結婚の自由ではなく、14条が定める法の下の平等に照らしての判断だった。

恋愛や性愛の対象が異性か同性かという性的指向は、人種や性別と同じように自らの意思では選べない個人の性質だと指摘し、等しく法的利益を受けられるべきだとした。

14条の平等原則は、憲法が核に置く個人の尊重とともに人権保障の根本指針である。

 憲法が施行されて74年。

性的少数者の権利保障を欠く法制度だけでなく、不平等の裂け目は社会の至るところで口を開けている。

誰もが尊厳を持つ存在として等しく尊重されているとは言いがたい現実に目を凝らしたい。

   <構造的な性差別>  コロナ禍による経済活動の制約はとりわけ女性に深刻な影響を及ぼし、雇用の男女格差を浮き彫りにした。

働く女性の半数以上は非正規雇用で、賃金の水準も低い。

週35時間以上働いている女性の4割余が年収250万円に満たないという。

働く場を失い、途端に困窮に陥った人が少なくない。

 女性の収入がいまだに家計の補助と見なされることが格差の根底にある。

家事や育児は女性の仕事だとして性別で役割を分ける意識も根深い。

自立を困難にしている構造的な性差別が、DV(家庭内暴力)被害や自殺の増加にもつながったと指摘されている。

 結婚した夫婦の96%が夫の姓を名乗っていることも実質的な不平等の表れだ。

夫婦同姓を定めた民法の改正を法制審議会が答申してから25年を経て、別姓を選べる制度は実現していない。

 コロナ禍で困窮した学生を支援する緊急給付金で、朝鮮・韓国籍の学生らが通う朝鮮大学校は対象にならなかった。

高校の無償化、幼児教育・保育の無償化でも朝鮮学校は除外されてきた。

   <逆立ちした論理>  法の下の平等は、国籍に関わりなくすべての人に保障されなくてはならない。

外国人だからと人権や尊厳が軽んじられていいはずはない。

朝鮮学校の排除は、学ぶ権利を損なう差別である。

 各地の入管施設では、在留資格がない外国人が送還に応じるまで無期限に収容されている。

自殺や未遂が相次ぎ、体に異変を来した人が放置されて死亡する事例も絶えない。

3月には名古屋入管でスリランカの女性が亡くなった。

 人身の自由は、在留資格の有無にかかわらず保障されるべき人権だ。

収容は最後の手段でなければならない。

にもかかわらず、入管は収容を原則とする。

その権限や裁量を正当化する根拠となってきたのが、最高裁が1978年に出したマクリーン判決だ。

 憲法の基本的人権の保障は外国人にも等しく及ぶと述べながら、それは在留制度の枠内で与えられるにすぎないとした。

入管に憲法を超える権限を認めるかのような逆立ちした論理である。

元最高裁判事の泉徳治さんは「明らかに誤り」だと批判している(「判例時報」2434号)。

 国連の人権機関からの再三の懸念表明や改善の求めにも政府は応じていない。

この国会に提出した入管難民法の改定案は、送還の権限を強め、状況を一層悪くする恐れが大きい。

成立が強行されぬよう厳しく見ていく必要がある。

   <連帯する足場を>  戦争被害の補償でも、分け隔てが続いてきた。

元軍人・軍属らに累計60兆円に上る恩給や年金を支給する一方、民間の空襲被害者への補償は一切ない。

障害を負った存命の人に限って一時金50万円を支給する議員立法さえ足踏みし、いまだ国会に提出されない。

 旧優生保護法により障害者らが不妊手術を強いられた重大な人権侵害は一昨年ようやく、被害者に一時金を支払う救済法が成立した。

しかし、被害の回復が図られたとは言いがたい。

 旧法は現憲法の下で半世紀近く存続し、およそ2万5千人が手術を受けさせられた。

改定後も政府は謝罪や補償を拒み、救済法も国の責任を明確にしていない。

 ハンセン病患者の強制隔離も現憲法下で長く続いた重大な差別政策だ。

2001年に違憲判決が出て国は誤りを認め、被害者に賠償し、歴史の検証もした。

けれども、負の歴史に社会が正面から向き合ってきたと言えるだろうか。

 コロナ禍で感染者や家族に向けられた心ない言動は、かつてハンセン病患者を排除した「無らい県運動」を思い起こさせた。

過ぎ去ったことと片づけられない。

 不平等な扱いや差別によって誰かが苦しむのを見過ごせば、自らの足元も崩れていく。

目をそらすのは加担することでもある。

連帯して状況を動かしていくための足場を築きたい。

信濃毎日新聞 2021/05/03 09:16