AERA.dot秦正理2021.4.22 17:00 「老害」──最近よく耳にするこの言葉に、ドキッとしている人は多いのでは。

いわれなき“年配者バッシング”は許せないが、加齢に伴う体や脳の変化によって怒りっぽくなったり、新しい知識を取り入れにくくなったりすることは実際にあるという。

柔軟な心を保つ方法を調べてみた。

「自転車で走っているときに、前方の道幅いっぱいに若者が広がって歩いているのを見ると、イラつきが抑えられなくなって、一度鳴らせばいいベルをつい何度も鳴らしてしまう。これが老害ってことなのかな」 都内に住む60代後半の男性は、自嘲気味にこう話した。

高齢化社会となった日本ならではの現象なのか、昨今、「老害」という言葉をよく耳にする。

中でも記憶に新しいのは、女性蔑視発言で辞任に追い込まれた東京五輪組織委員会の森喜朗前会長。

釈明会見の中で自身について「老害は粗大ゴミになったのかもしれませんから、そしたら掃いてもらえばいいんじゃないですか」と、自虐的に話したが、ふてくされた態度が余計に“老害感”を醸し出し、火に油を注いでしまった。

後味の悪いこの騒動を見て、「もしや自分も、老害じゃないのか」と不安になった人もいるのでは。

老害化を防ぐためにはどうしたらいいのか。

まずは老害に陥るメカニズムから解説していきたい。

『「上司」という病』の著書がある精神科医の片田珠美氏がこう語る。

「どれだけ批判されても自分が悪いとは思わない人を『自分は正しい』症候群と呼んでいます。高齢者に限らず、どの世代にもこの症候群の人はいますが、年をとるにつれてこうした傾向を悪化させる要素が増えていくんです。そうして暴走してしまった状態が老害であると考えています」 片田氏によると、この症候群を悪化させる要素は主に四つ。

「強い特権意識」「過去の成功体験」「想像力の欠如」「甘い現状認識」だ。

中でも過去に成功体験があり、ある程度の地位に上り詰めている人ほど特権意識を持ちやすい、つまり老害になりやすいのだという。

「組織の中で『長』がつくような役職を務めた人は特に特権意識が強くなり、自分は特別な人間だから普通の人には許されないことでも許されると思いがち。その意識は『自分は正しい』症候群を悪化させやすい」(片田氏)  支配欲求が強くなり、思いどおりにならないとすぐに怒りだしたり、人を排除したり攻撃したりするのも特徴だという。

 実は、こうした“変化”には加齢に伴う脳や身体の機能の衰えも影響している。

眼科医としてのべ10万人以上の高齢者と接してきた医学博士の平松類氏はこう解説する。

「お店や病院などで少しの時間も待てずにクレームをつけてしまうことはありませんか。それは認知能力や視覚や聴覚が若いころより衰えているからかもしれません。人間は年齢によって時間の感じ方が違うので、若いときには何でもない待ち時間でも長く待たされたと思ってしまうのです」 避けがたいかに見える老害化の波だが、対策はある。

まずは次の三つの方法を実践してみよう。

 たとえば「1分経ったと思ったらボタンを押す」という北海道大学の高齢者の時間感覚に関する研究で、20代は平均して61秒とほぼちょうどでボタンを押したのに対し、70代は32秒という結果だった。

つまり、同じ待ち時間でも高齢者は2倍も長く感じるのだ。

 視覚についても、若い人なら平気で読める文字の大きさでも高齢者には読みづらく、イライラしてしまうことはよくあるという。

聴覚や記憶力も同様だ。

「高い声は高齢者にとって聞きづらい音域で、人が注意するときの声は音域が高く耳に入りにくい。さらに記憶力の低下で、新しい情報を見聞きしても脳に定着しにくい。その結果、『この人は周囲の声に耳を傾けない』『都合のいいことだけを聞いている』と言われてしまうのです」(平松氏)  精神科医の和田秀樹氏は、「老害」に陥った人が感情的になりがちな原因をこう話す。

「感情をつかさどる前頭葉の機能が加齢とともに衰えることで、怒りなどを抑制することが難しくなる。普段は温厚でも、何かの拍子にスイッチが入るとブレーキが利かなくなり衝動的になります。他にも、頑固だった人がより頑固になるなど、元から持っていた性格が極端になる傾向もあります」 (長文のため以下リンク先で)