米国フロリダ州、開発によって拡大する郊外の住宅地の片隅で、人目につかずにしぶとく生き抜く大型ネコ科動物がいる。

フロリダパンサーだ。

過去の危機からは徐々に回復しつつあるものの、新たな脅威がこの動物の前に立ちはだかっている。

ピューマの亜種に分類されるフロリダパンサーは、かつては米国南東部のほぼ全域に生息していた。

だが、ハンターたちの標的となり、1970年代までにフロリダ州でしか見られなくなった。

個体数は30頭を下回り、近親交配の悪影響が出やすい状態になっていたという。

そこで、研究者たちは前代未聞の救援作戦を考えついた。

90年代半ば、世界最高のピューマ追跡者とされるロイ・マクブライドを雇い、彼の地元のテキサス州で8頭の雌のピューマを捕獲して、それらをフロリダ南部に放したのだ。

そのうち5頭が子を産んだ。

こうして遺伝的多様性がもたらされたことで、フロリダパンサーの負のスパイラルは反転した。

その後、個体数は徐々に増え、現在では200頭ほどになっている。

その大半はフォート・マイヤーズの東を流れるカルーサハッチ川の南側の広大な土地に暮らしている。

「あれは米国の自然保護活動の歴史上で最もドラマチックな成功物語の一つです」と、ナショナル ジオグラフィック協会が支援する自然保護活動家で写真家の カールトン・ウォード・ジュニアは言う。

ただ、いくつかの脅威がフロリダパンサーの将来に暗雲をもたらしている。

1日に900人ほどが転入してくるフロリダ州では、宅地開発と道路建設がこの種の脅威になっているのだ。

計画中の大規模な有料道路網「M-CORES」が実現すれば、オーランド近郊とネープルズを結ぶ全長225キロの区間も開通する。

それは同時に、動物たちが行き来できる「野生生物回廊」や、フロリダ南西部の内陸に残された未開発地の一部を分断することになる。

脅威はまだある。

ネコ白質脊髄症と呼ばれる神経系の疾患に侵されたパンサーやボブキャットが州内で見つかっているのだ。

発症すると、よろめいたり、歩行に支障を来したりすることが多く、重篤な場合は死に至る。

州によれば2020年12月の時点で、26頭のボブキャットと18頭のフロリダパンサーがこの病気にかかったと考えられている。

発病した個体の大半が、造成地に隣接する地域で発見された。

ただ、比較的手つかずの地域でも見られることは気がかりだと、1980年代前半からフロリダパンサーを研究しているデボラ・ジャンセンは話す。

直面する脅威を考えれば、「フロリダパンサーの未来には大きな疑問符がつく」とも彼女は言う。

だからこそ、生息域を広げる必要があるのだと。