中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区で、中国当局によるウイグル族女性に対する人権弾圧が深刻化している。

施設に収容されたウイグル人女性らが性的暴行や虐待、拷問が組織的に行われていたと証言しているが、 中国政府はその存在を真っ向から否定する。

日本国内でも、遠い故郷で起きている人権弾圧を国際社会の力で阻止しようと、在日ウイグル人たちが抗議の声を上げ続けている。

「ウイグル人の女性は強制不妊手術で命を落とした人が数多くいる。中国政府によって生まれてこなかった赤ちゃん、 生まれても自由に生きる権利を奪われた民族のために黙祷(もくとう)をささげてほしい」 3月7日、東京・神宮前の国連大学前で、在日ウイグル人女性のグリスタン・エズズさん(36)はこう声を張った。

集会には、それぞれの民族衣装を身にまとったウイグル自治区やチベット自治区、内モンゴル自治区、 香港の出身者ら約40人が故郷での人権弾圧の即時停止を強く求めた。

エズズさんは18歳まで暮らしたウイグル自治区で、人工中絶の事例を頻繁に耳にしてきた。

ウイグル族の女性は3人目の子供を身ごもれば人工中絶させられ、第1子と第2子の間に十分な期間を空けなかったとして、中絶を強いられた女性もいたという。

住んでいた村では、妊娠に関する取り締まりは同じウイグル族女性が担っていた。

エズズさんは「(その女性は)がんで亡くなったけど、 『ウイグルの赤ちゃんの恨みで早死にした』といわれるほど、村中から嫌われていた」と振り返る。

米国務省は2020年版の国別人権報告書でウイグル自治区で 「市民100万人以上が恣意的な収監やその他の手段で身体的な自由が奪われている」と指摘する。

05年に留学などを目的に来日したエズズさんも自治区に残した家族と連絡が取れない状況が続いている。

その発端は17年末だった。

「弟は勉強に連れていかれた」家族からの電話は盗聴の恐れがあったのか遠回しな言い方だったが、弟が収容所に送られたと確信した。

エズズさんは悩んだ末の18年8月、弟が施設に収容されたことを訴える動画をインターネット上に公開した。

家族が弟を探していることを海外で明らかにすれば、中国当局への牽制(けんせい)となり、結果として弟に危害を加えにくくなるだろうと考えたからだ。

だが、事態はその思惑と逆の方向に動く。

告発動画の公開直後、姉たちが中国当局に事情聴取され、こう言われたという。

「お前の妹は国家分裂罪を犯した。その責任はあなたらが受ける」。

19年4月24日を最後に、エズズさんは故郷の家族と連絡が取れなくなった。

「証言したことで、家族と連絡が途絶えた。他の親戚も収容されたかもしれない。自分のせいだ」 今もエズズさんは精神的に落ち込み、安全な日本で抗議活動を続ける自分に無力感も感じている。

自治区の女性の人権問題は深刻化している。

今年2月、複数のウイグル族の女性が、収容所で中国人の警察官らによる性的暴行が日常化していたと英BBC放送で告発した。

中国外務省の報道官は「組織的な性的暴行や虐待は全く存在しない」と報道を否定するが、国際社会が求めている調査団の受け入れは拒んでいる。

BBCの放送後も、自治区からの亡命者が収容所での性的虐待の実態を告発し続けている。

エズズさんは「ウイグルの女性は強制手術を受けても、暴行を受けても、役人に文句を言うのは、死を覚悟しなければできない」と話す。

それに比べ、日本は「自由」であふれ、人権も尊重される。

日本人には「アジア全体を見て、ウイグルやモンゴル、チベット、香港の女性のためにも声を上げてもらいたい」と願う。