農作物被害対策で駆除された鳥獣を、ジビエ(野生鳥獣肉)として有効活用する動きが進む中、東京農工大(府中市)の学生が設立した団体「けものみち」は、山梨県丹波山(たばやま)村でジビエの加工、販売を行う「タバジビエ」と連携、ジビエを利用した地域おこしプロジェクトを進めている。

 扱うのは、駆除されたシカの骨でだしをとったラーメン「タバラーメン」だ。

クラウドファンディング(CF)も利用しながら、「タバラーメン」を村の新たな名産品として発信していく。

(本江希望)  丹波山村のシカの骨といりこでだしをとったスープに、シカ肉のチャーシューとそぼろがトッピングされたシカづくしのタバラーメン。

3月27日に都内で行われた試食会は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、入れ替え制で行われ、計48人が舌鼓をうった。

参加者の一人で新宿区に住む大学教員の岩井雪乃さん(50)は「スープは濃厚だけどさっぱりしていて、シカのチャーシューは弾力があって野生の強さを感じた」と笑顔で感想を語った。

 プロジェクトに参加するけものみちは、狩猟活動などを通じて野生動物保護管理を学ぶ東京農工大のサークル「狩り部」が立ち上げた。

代表の赤石旺之(おうじ)さん(22)によると、これまで丹波山村での狩猟体験などを通じて、自然との共生や野生動物の保護管理の重要性を感じてきたという。

「タバラーメンを広めて丹波山の魅力を知ってもらい、環境問題を考えるきっかけになれば」。

そう力を込める。

 農林水産省によると、野生鳥獣による農作物の全国の被害額は、令和元年度で年間158億円。

シカは年間約60万頭が捕獲されているが、多くが廃棄され、食肉として利用されるのは1割ほどだという。

 山梨の北東部に位置する丹波山村は人口約550人の小さな村だが、約35人の猟師がおり、猟友会の協力で駆除したシカの利活用を積極的に行っている。

 同村でジビエの加工、販売を行うタバジビエの代表、保坂幸徳(ゆきのり)さん(44)によると、かつてはシカを捕獲しても、食肉となる部分のみを利用するだけで残る約4分の3は廃棄されていた。

しかし、近年は皮を山梨の伝統工芸品「甲州印伝」に使用するなどさまざまな部位の使用を進めており、今回、骨をラーメンで活用することで、シカ1頭の7割を有効利用できるようになったという。

 「村には、神様からの授かりものである尊い命を無駄にしないという猟師の教えがある。タバラーメンを通して、大事な命を余すことなくいただくことの大切さも伝えたい」と保坂さん。

 タバジビエとけものみちはCFでタバラーメン事業の準備資金を26日まで募っており、成功すればゴールデンウイークに村内でタバラーメンを販売する予定だ。

支援者にはシカ肉やタバラーメン無料券などの返礼品を用意した。

詳しくはCFのホームページ(https://readyfor.jp/projects/tabaramen※インターネットで「タバラーメン クラウドファンディング」と検索)。

2021年4月2日 21時37分 産経新聞 試食会で提供されたタバラーメン。

山梨県丹波山村で捕獲されたシカの骨でだしを取っている=3月27日午後、江東区