「2011年を起点として、富裕層がどのくらいのパーセンテージ増えているのか」を示したグラフ ■コロナ危機のウラで「絶望的格差社会」が到来した  不況下の株高によって、「持てる者」と「持たざる者」の格差が絶望的に広がってしまいました。

 コロナ危機が勃発して以降、アメリカをはじめ世界の中央銀行が大規模な金融緩和を推し進める一方で、各国の政府は巨額の財政出動で景気の下支えを続けています。

その結果として、溢れ出したマネーが金融市場に流れ込み、実体経済は悲惨だというのに株価は高騰しています。

 これは逆説的にいえば、「コロナ危機がなければ、株価の高騰はなかった」という現実を示しています。

余りに余ったマネーがなければ、株価がコロナ前の水準を超えて大幅に上昇するなどということはありえなかったというわけです。

※省略  世界中で2000人あまりいる保有資産10億ドル以上の超富裕層は、2020年のたった1年間で約1.9億ドルの資産を増やしました。

株高が続いている2021年になっても、資産が増えるペースは加速しているか、あるいは変わっていないことが推測されます。

 これに対して、コロナ不況のもとで、全世界で20億人を超える人々が生活苦に苦しんでいます。

※省略  金融緩和と財政出動によって過度に押し上げられた株価に潜む最大のリスクは、株価の暴落といった金融分野のことではありません。

それよりもむしろ、格差が急拡大することによって国家の分断が進み、民主主義が機能しなくなるということなのです。

これはアメリカにかぎった話ではありません。

 景気が急回復することは「V字」回復、景気が回復せず横ばいが続くことを「L字」型などといわれますが、私たちが懸念しなければならないのは、二極化が進み上向きと下向きに差が開く「K字型」の状態です。

豊かな者がさらに豊かになり、貧しい者がさらに貧しくなる、こういった経済金融政策の運営を一刻も早く是正しなければなりません。

 歴史を振り返ると、古代ギリシャのアテネや古代ローマ帝国は豊かな中間層の衰退によって民主主義が崩壊、衆愚政治が台頭し、凋落の一途を辿っていきました。

そういった意味では、現代の民主主義国家は大きな岐路に立たされているといえそうです。

■日本でも超富裕層・富裕層が急増している  日本でも日経平均株価が30年ぶりに3万円を突破したと騒がれましたが、いつ株高の負の側面がクローズアップされ始めてもおかしくはありません。

というのも、アメリカと同じように日本でも、2013年のアベノミクス開始以降、格差拡大が着実に進んできたからです。

 野村総合研究所の調査・推計によれば、保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた「純金融資産保有額」が5億円以上の「超富裕層」は2019年に8.7万世帯、1億円以上5億円未満の「富裕層」は124万世帯に増えたといいます。

株高が始まる前の2011年と比べると、それぞれ74%、63%と大幅に増えていたのです。

 隔年の調査・推計のため2012年と2020年のデータが存在しないものの、数字の推移からみて2013年以降から続いている株価上昇によって、超富裕層と富裕層の世帯数が急増しているのは明らかです。

株高が進んだ2020年の数字があれば、超富裕層と富裕層の世帯数がいっそう増加していることは間違いないでしょう。

 その一方で、他の先進国や新興国と同じように日本でも、コロナ禍は主に低所得層やサービス業従事者の収入に大きな打撃を与えています。

日本ではとりわけ非正規雇用の女性への悪影響が大きいことがわかっています。

総務省の労働力調査によれば、2021年1月の非正規で働く女性は11カ月連続で減少し、前年同月比で68万人も減っているのです。

男性の減少数22万人を3倍超も上回っているというわけです。

■資本主義はどこへ行くのか  また、金融広報中央委員会の調査によれば、2019年の時点で単身世帯の38%、2人以上世帯の23.6%は貯蓄がないということです。

高齢者世帯から若年世帯まで年代に関係なく、無貯蓄の世帯が広がっていることが浮き彫りになっています。

 新型コロナは世界的な健康被害だけでなく、格差拡大を招くウイルスでもあります。

デジタル化と株高の双方を急速に推し進め、富裕層と貧困層の格差を助長するという悪循環をもたらしています。

資本主義と民主主義を両輪とする各国には、この悪循環を食い止めるリーダーの誕生が望まれます。

(中原圭介 経済アナリスト) 現代ビジネス 4/2(金) 6:31配信