東日本大震災に関連する自殺が、震災発生から2020年末までの約10年間で240人に上ることが厚生労働省の統計で明らかになった。

専門家は「東京電力福島第1原発事故からの避難の長期化などが影響している可能性がある」とみており、“心の復興”への支援の重要性を指摘している。

 「震災関連自殺」に該当するのは、仮設住宅の入居者や被災地からの避難者が亡くなった▽遺書の内容から自殺の原因が震災だと分かった――といった要件を満たすケース。

統計によると、震災後は11年以降毎年20人以上で推移し、18年は9人に減ったが、19年は16人と増加に転じ、20年は5人だった。

 自殺が判明した場所の県別累計では、最多の福島が118人、宮城が58人、岩手が54人――など。

原因別では、健康問題が115人で最も多く、家庭問題は52人、経済・生活問題が50人だった。

原因不明も63人に上った。

 福島県立医科大の前田正治教授(災害精神医学)は、福島が多い点について「原発周辺自治体から県内の別の自治体に避難している人は多く、精神的な負担が続いている。県外への避難も含め、元の居住自治体から遠いほど支援が届きにくくなっている」と指摘する。

 一方、宮城や岩手はどちらも、生活が激変した震災1年目の自殺が最も多かった。

近年は、震災後の転居や災害公営住宅(復興住宅)への入居で地域との関わりが薄まるなどして孤立化したとみられるケースもあるという。

 前田教授は「震災直後は何とか頑張れた被災者も、時を経ると疲弊する。生活の再建や心の復興には個人差があり、10年たった今も苦しんでいる人がいることを忘れてはならない。今は新型コロナウイルスの影響で、復興住宅での見守り活動がしづらいため、孤立化しやすい。そうした人への支援を含め、対策を考えていく必要がある」と話している。

【金森崇之】 「心の復興に至らない被災者知って」  仙台市在住の飯塚正広さん(59)は、30年以上連れ添った妻(当時57歳)が2019年4月、ついのすみかと決めた復興住宅で自ら命を絶った。

そのつらい経験から「震災から時を経ても、心の復興に至らない被災者がいることを知ってほしい」と願う。

 飯塚さんは、東日本大震災で宮城県岩沼市の自宅が全壊し、11年8月に仙台市で最大の仮設住宅に入居。

自治会長として入居者の交流に尽くした。

15年に同市内の復興住宅に移った後も、入居者のコミュニティーづくりを進めるNPO活動に携わるなどしていたが、自身が原因不明の腹痛で倒れるなどし、体調が優れない中、突然妻を失った。

 遺書はなく、飯塚さんは「震災後、走り続けて体調を崩した自分をみて、悲観的になったのか」と割り切れない気持ちでいる。

「自分のように家族の死で悲しい思いをする人をなくしたい。被災者は復興住宅に入ったら、もう大丈夫と思わないで」と支援の必要性を訴える。

不安や悩みの主な相談窓口(略) 毎日新聞 2021/4/2 13:59(最終更新 4/2 14:10) 1330文字