文:小田千鶴 時たま、ニュースを騒がせる乳児遺棄事件。

その悲劇に、誰しもが胸を締め付けられることだろう。

こうした事件は日本だけに限らず、アメリカでも起きている。

今、24年前に起きた乳児遺棄事件が新展開を迎え、大きな注目を集めている。

■少なすぎた手がかり、数十年に及んだ途方もない調査 1997年11月18日、クリスティン・マリー・ウォーレン(現在50歳)は、米国シアトルのメープルリーフ地区にあるガソリンスタンドのトイレ内で男の子を出産。

クリスティンは生後まもない赤ちゃんをガソリンスタンドのゴミ箱に遺棄した。

その2日後、ガソリンスタンド従業員が発見したことにより事件は明るみになった。

店内の監視カメラは、赤ちゃんを遺棄したと思われる母親らしき人物の姿は捉えていた。

しかしあまりにも少ない手がかりであったため、シアトル警察は途方もない捜査に取り組むこととなった。

警察は2018年、現場に残された母親のDNA型をオクラホマシティの民間研究所に送付し、鑑定を実施。

そして、母親と親族関係にある可能性の人物のリストを作成した。

2020年3月、このリストにクリスティンの名前が追加され、警察はクリスティンがシアトル在住であり、監視カメラの母親と酷似していることに気付いた。

2020年11月、警察はクリスティンにギフトカードと架空のフレーバーウォーターに関する試飲キャンペーンの招待状をメールで送った。

クリスティンは快く応じ、アンケート結果を返送した。

警察はその返送用封筒の封に付着したクリスティンの唾液を使って、DNAを採取し鑑定した。

すると、24年前に現場に残されたDNAと完全に一致。

警察の取り調べに応じたクリスティンは容疑を認め、第2級殺人罪で逮捕されたという。

■赤ちゃんの父親に否定され…、頼る人がいなかった母親の苦しみ ただクリスティンの行動の背景には、思わず胸が詰まるような事情があったのも事実のようだ。

『KING5』によると、当時クリスティンにとって妊娠は予定外であり、赤ちゃんの父親に当たる男性に妊娠を告げた時、否定的な反応をされたという。

クリスティンは出産という事実に耐えられず、妊娠自体を頭から消し去ってしまったとも言っている。

そのため適切な医療を受けず、妊娠していることすらも誰にも言わなかったとのこと。

検察はクリスティンには前科はなく、調査に協力的であると明らかにしている。

生まれてきたばかりの尊い命が、母親によって失われたことは紛れもない事実である。

しかしその背景を切り取ると、赤ちゃんの父親の影響とその重圧に押しつぶされたクリスティンを、単純に責めることが出来るだろうか。

事件が解決したことで、シアトル北にあるカルバリー墓地に多くの募金によって埋葬されたこの赤ちゃんが安らかに眠ってくれていることを願うばかりだ。

2021.04.01