ゲンダイ 「世界中のどこにも行けなくなる事態はこれまで経験したことがない」――。

大手旅行会社「HIS」の有田浩三執行役員はしみじみと語った。

コロナ禍の影響をもろに受け、HISの2020年10月期の連結決算は、営業損失311億円と02年の上場以来、初の赤字となった。

「コロナのせいにしていても何も生まれない」として、考えたのが異業種。

昨年春、社員に新規事業を募り、5000件超の中から“ホテル・旅館再生”や“終活関連”など10件を選び事業化を進めている。

注目なのが、そば屋だ。

有田浩三氏が言う。

「そば屋の多くは個人経営。後継者が見つからず、コロナ禍を機に閉店を考えるケースも少なくありません。でも、おいしくて、地元で人気があり、利益も上げている店がやめてしまうのは残念でならない」  HISのそば屋第1号店は、老舗からの技術移転だった。

事業を継続するか悩んでいた、創業31年のそば屋(神奈川県伊勢原市)から技術移転を受け、昨年10月、埼玉県川越市で「満天ノ秀そば」1号店を開店した。

 さらに、HIS社員が独自で一から立ち上げた、飯田橋店、神田店、四ツ谷店を開店させた。

チェーン店とはいえ、開店した4店舗は、それぞれ味やスタイルが異なる。

休業中の旅行担当の社員が店員としてバイトに入っている。

 今月16日にオープンしたばかりの四ツ谷店の責任者中村隆一氏が言う。

「HIS歴12年になりますが、これまで旅行関係の仕事をしてきました。20代の頃、飲食関係の仕事をして、調理師免許を持っていましたが、それがHISで生かされるとは思っていなかった。四ツ谷店では健康をコンセプトに食前酢を出しています」  19日のお昼時に四ツ谷店を訪れた。

10テーブルは満席だった。

食べた鴨南蛮そばはおいしかった。

 老舗そば屋の味を引き継ぐパターンと独自で立ち上げるパターンを合わせてHISは100店舗のそば屋を目指している。

事業を継続するか悩むそば屋から問い合わせも来ている。

老舗のそば屋が築いてきた味は生かしながら、チェーン店を広げていく予定だ。

味やスタイルが異なるチェーン店である。

さらにその先に海外を見据える。

「そばは健康食で歴史のある日本食なのに海外では寿司やラーメンなどに比べ、認知度が低い。海外でなかなかおいしいそばにも出くわさない。日本そばの海外展開は伸びしろがある市場だと思っています」(有田浩三氏)  コロナ禍を乗り越えて生き残った老舗そば屋の味が海外で人気を博す――。

意外とあたるかもしれない。