日刊SPA2021年02月22日    2月19日から公開される映画『あの頃。』が大きな話題を呼んでいる。

作品のテーマは「アイドル」ではなく「アイドルヲタク」。

ハロー!プロジェクトのファン(ハロヲタ)がまだ「モーヲタ」と呼ばれていた2000年代初頭、推しの応援に青春を捧げた若者たちの青春群像劇となっているのだ。

初期モーヲタの過剰性について触れた前編に続き、中編となる今回は他のアイドルファンからも特別視されるハロヲタの特徴を再定義。

原作本『あの頃。男子かしまし物語』(イーストプレス)著者であり、映画では松坂桃李演じる主人公のモデルになった劔樹人氏を中心に、昔からの劔のヲタ仲間である明大店長氏、アイドルヲタク界に強い影響力を持つピストル氏を交えて激論が交わされた。

これぞモーヲタ頂上座談会だ! ◆「握手をしない」ハロプロヲタの矜持 ──ハロプロのファンはアイドルファンの中でも少し特殊だと指摘されることがあります。

どういうところに特徴があるとお考えですか? ピストル:僕はそのうちハロプロだけじゃなくいろんなアイドルを追うようになるんですけど、最初にAKB48に行ったとき、なんというかファンがもっと狭いところを見ているような気がしたんですよ。

AKB48もドームツアーをやるような存在になってからは体質が変わっていきましたけど、初期はすごく内向きな雰囲気でね。

なにしろ同じ劇場で同じメンバーが同じ演目を毎日やっているわけだから「今日は〇〇ちゃんがこんなことをMCで話した」「今日は●●ちゃんがいなかったのでポジションがこう変わった」くらいしか論じることがないんです。

ヲタ同士での活発な意見交換とかは皆無でした。

そのへんはちょっとしたカルチャーショックを受けましたね。

劔:初期のAKBファンって若かったんですか? ピストル:いや、ピンチケ(※若いアイドルファンの総称。

AKB48劇場で販売される中高生向けのチケットがピンク色だったことが語源)は少数派。

ハロプロ流れのオッサン連中が多かった。

正確にいうと、ハロプロにハマりきれなかったオッサンたちです。

要するにAKB48からは80~90年代の匂いがしたから懐かしくて安心できたんでしょうね。

僕の印象からすると、ももクロ(ももいろクローバーZ)のヲタが気質的には『LOVEマシーン』や『恋愛レボリューション21』の頃のモーヲタに近かった。

「オイ! オイ!」と粗暴に騒ぐような感じで。

劔:でも「もっとメンバーと近い関係になりたい」という考えを持つ人は、自然にハロプロからAKB48に流れていきましたよね。

やっぱりそこが初期AKB48の軸だったわけじゃないですか。

狭い会場でメンバーと話ができるというのが最大の強みであって。

明大:ハロプロは接触がほとんどなかったですから。

当時のハロヲタは妙にストイックなところがあって、コンサート会場で「この満足感はキャバクラなんかじゃ絶対に得られない。俺たちは7000円払ったところで握手も会話もできないかもしれない。でも、それでいいんだ」って力強く頷いていました。

ピストル:その話、すごくわかるな。

当時ハロプロは握手をほとんどしていなくて、海外ファンクラブツアーから徐々に解禁していったんです。

その黎明期、僕がお見送り握手に並んでいたら、握手をせずに帰っていく人がいたんですね。

「どういうことだろう?」と思うじゃないですか。

それで周りのヲタに聞いてみたら、「あの人はハワイに行ったときですら握手しなかった」と言うんです。

 要するに「握手をしにハワイへ行ったのではなく、そこでしか聴けないセットリストがあるからハワイに行ったんだ」というのが彼のプライドなんです。

わざわざ30万円出してハワイまで行き、「アイドルとの握手なんて自分から拒否する」というのが自分なりの武士道(笑)。

◆ヲタ活はブルジョアジーの趣味 劔:当時もライブ会場前の広場にラジカセを持ち込みヲタ芸を打ちまくる軍団とかいたじゃないですか。

あれは今でいうピンチケの趣もあるし、外に向けて自己主張したいというヲタの姿勢は昔も今も変わらないのかもしれない。

今もSNSが発達する中でメンバーのことを漫画化する人が出てきたり、才能は途切れなくヲタの中から現れている印象はありますけどね。

ピストル:とにかくハロヲタってああだこうだと議論するのが好きだから、終演後に呑みに行きたがるんですよね。

だけど、毎回のように居酒屋に行っていたらお金がかかってしょうがない。

チケット代、遠征費、宿泊費に加えて居酒屋代で4000~5000円かかるとなると、ブルジョアジーの趣味という話になりますよ。

若い子はついていけない。

だからハロヲタってIT系のエリートサラリーマンとかが意外に多かったんです。

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